GitLab における信頼の構築
はじめに
信頼は、GitLab における私たちの活動の基盤です。私たちは、チームメンバーが厳格なルールに従うのではなく、正しいことをすると信頼しています。お互いを傷つけずに迅速に行動できるのは、信頼があるからです。
信頼は構造の強さのようなものだと考えてください。企業が 10 億ドル規模から数十億ドル規模へと成長する過程では、大きな負荷がかかります。技術、人、事業に関する難題、長時間労働、ストレス、そしてプレッシャーの下で働く人間ならではの緊張やいら立ちです。強い信頼関係のあるチームは、その負荷にしなやかに耐えます。信頼のないチームは壊れ、その結果、誰もが機会を失います。スキル、経験、知性、勤労意欲を基準に採用することはできます。しかし、信頼は違います。私たちはお互いの信頼を築き続ける必要があります。
信頼は変わらないものではありません。あらゆるやり取りが信頼を増やしたり、減らしたりします。そして、どれほど信頼し合う関係であっても、さらに強める余地があります。だからこそ、信頼はこれからの嵐に対する最良の備えになります。
リモートワークでは、信頼の重要性がさらに高まります。マネージャーが信頼と人間関係の結びつきを築くために必要な対策を取らなければ、孤立を感じることがあります。また、リモートのチームメンバーがお互いを知るには、通常、オフィスで働く場合よりも時間がかかります。私たちはインフォーマルなコミュニケーションでその差を埋めています。このページでは、リーダーとチームメンバーがほかにできることを紹介します。
自分の信頼メーターを確認する
私たちは信頼を感じれば、それが信頼だとわかります。一方で、信頼のない状態で働くことに慣れすぎて、直感に耳を傾けるのをやめ、そのままやり過ごしてしまうこともあります。もう一度自分の感覚に意識を向け、仕事上の関係の健全さを測る主な指標として直感を使ってください。
- 自分のマネージャーを信頼していますか?答えはすでにわかっているはずです。
- チームのメンバーを 1 人ずつ思い浮かべてください。それぞれを信頼していますか?
- 日頃一緒に仕事をする同僚についても、同じように考えてください。
信頼がない関係や、望むほど信頼が強くない関係をすべて書き留めてください。それらは構造の強さに関わる問題であり、多くの場合、あなただけが気づき、あなただけが解決できるものです。
信頼を構成する 3 つの要素
私たちは、信頼は共感、尊重、利他性という 3 つの要素から生まれると考えています。
共感
AI によって、誰でもこれまで以上に簡単に、賢く自信があるように話せるようになりました。これほどの推論能力を手にし、私たちの仕事にかかる重責やスピードに向き合っていると、人は純粋に合理的な存在ではないことを忘れがちです。私たちはまず感情に動かされ、感情が落ち着いているときにだけ合理的になれます。人は、あなたがどれほど自分を気にかけているかがわかるまでは、あなたの知識の量には関心を持ちません。
一緒に働く誰もが、あなたの知らない苦闘を抱えています。リーダーが耳にするのは、相手の人生で起きていることのほんの一部です。締め切りの遅れや難しい事業上の問題と並行して、健康、家族、個人的な課題にも向き合っています。どの肩書きの下にも、自分が持つもので最善を尽くしている 1 人の人間がいます。私たちの第一の仕事は、その人を支えることです。
誰かを支えることは、その人の問題行動を助長することではありません。共感とは、凡庸さや低いパフォーマンスを容認することではありません。仕事で苦しんでいる人は、個人としても苦しんでいます。失敗したい人はいないからです。共感を持つリーダーは相手を十分に気にかけ、期待に応えられていないときにはその事実を認め、人間味とプロとしての姿勢をもってその差に向き合い、ロールが合わなくなった場合はよりよい道を見つけられるよう支援します。
日々の共感は、主に小さな行動から生まれます。
- 適切な場合は、問題に取りかかる前に数分間、仕事以外の生活について話してください。
- 自分の考えを伝える前に相手の考えを尋ね、真剣に耳を傾けてください。
- 課題に取り組むときは、相手がそれをどう感じ、どのような影響を受けているかを尋ねてください。
- その感情によって方向性が変わらない場合でも、感情を受け止めたことを率直に伝えてください。
共感は、マネージャーが部下に向けるものだけではありません。どの 2 人の間でも信頼は双方向に働くため、同僚同士や上司に対しても重要です。次にマネージャーがいら立っているように見えたら、大丈夫か、何があったのかを尋ねてください。そして耳を傾けてください。
尊重
尊重していない相手を信頼することは難しく、健全な関係では尊重も双方向に働きます。私たちの多くは、自分がほとんど、あるいはまったく時間を費やしてこなかった領域の専門家と一緒に働いています。よく知る分野であっても技術は進歩しており、GitLab には独自の事情があります。
尊重を示す最も重要な方法の 1 つは、相手の時間を尊重することです。誰もがこなしきれないほどの仕事を抱えているため、常に何かを選び、価値ある仕事をやり残し、多くの場合、私生活の時間やエネルギーも犠牲にしています。会議を開く、誰かを問題への対応に巻き込む、優先順位を変えるといった行動のたびに、私たちは相手が最も不足しているものを使っています。
時間を尊重する方法:
- 詳細を把握してください。わからないことがあればそう伝え、調べてください。
- 同期的なやり取りの時間を有効に使ってください。
- できるだけ簡潔に伝えてください。
- AI が生成した粗雑なコンテンツではなく、よく考えた内容を非同期で送ってください。
- 相手があなたとのやり取りに費やすエネルギーに見合う価値を提供してください。
- エスカレーションはよく考えて行ってください。
尊重を示すほかの方法:
- 自分にはない、相手の経験、スキル、才能を認めてください。
- 相手の成果を認め、報いてください。
- アイデアの功績を認め、より広いグループの前で称賛してください。
利他性
自分の利益しか考えていないとわかっている相手と、仕事をしたいと思いますか?利他性は、その正反対です。
利他的であることは、野心を捨てることではありません。ここにいるほぼ全員が野心を持ち、自分や家族を養う意欲を持っています。それは問題ありません。大切なのは、どのように成功を目指すかです。誰もが自分のことを最優先にすれば、全員が損をします。誰もが会社を第一に考え、全体の成果を最大化すれば、全員に成功の機会が生まれます。何も保証されてはいませんが、長期的に個人として報われるためには、そう信じて踏み出す必要があります。
日々の利他性とは、言葉を行動で裏づけることです。利己的な人は口で言うだけで、最後まで実行しません。利他的な人は、時間とエネルギーを使って障害を乗り越え、やると言ったことを実行します。そして、誰にでもあることですが、やり遂げられなかったときには責任を認め、もう一度挑戦します。言い訳は、気づかれにくい形の利己主義です。
社内政治、上下関係を使った駆け引き、私利私欲を持ち込む余地はありません。それらが入り込むと、信頼は損なわれ始めます。政治的な駆け引きは GitLab のバリューに反するを参照してください。
会社を第一に考えることには、役立つ副次的な効果があります。それは、全員が同意できる唯一のことだという点です。そのために、自分のアイデアが選ばれなかったり、自分のチームが望んだ予算や優先順位を得られなかったりすることもあります。会社の成功に集中し、自分が優先するものがなくても会社が成功する方法を探せば、エゴを乗り越えることはずっと容易になります。会社が成功すれば、あなたも成功します。
信頼と運営原則のつながり
私たちの運営原則は、この 3 つの要素と密接に結びついています。
品質を伴うスピードは、時間の尊重に関わります。機会を生かして行動できる期間は限られており、私たち一人ひとりが使える時間も限られています。スピードを追求する中でも、尊重を忘れないでください。
オーナーシップのマインドセットは、利他性に関わります。オーナーは、個人の成功がその後に続くことを理解しているため、会社の成功を第一に考えます。
顧客の成果は、共感に関わります。顧客は、私たちが気にかけ、自分よりも優先すべき最も重要な人たちの一部です。あらゆることを判断する基準として、長期的に顧客の満足と成功につながるかを考えてください。そうであれば、おそらく正しい行動です。そうでない場合や、顧客が気づきもしない場合、なぜそれを行うのでしょうか?
信頼についての誤解
共感とは、腫れ物に触るように振る舞うことではありません。もっとよくできることがあるときに真実を伝えることは、お互いに示せる最大の尊重の 1 つです。優しさは、見て見ぬふりをすることではありません。誰もが、自分で思い込んでいる限界の先を見るために助けを必要としています。そうして私たちは、お互いが可能だと思っていなかった水準に到達できるよう支え合います。
信頼があれば、うまくいっているときも、特に改善が必要なときも、率直に向き合えます。そして、ほとんどの場合、改善は必要です。信頼があれば、全員が会社にとって最善の結果を目指していると確信しながら、一緒に事実に向き合えます。
信頼の 10 の側面
GitLab の共同創業者 Sid Sijbrandij は、信頼の 10 の側面を挙げました。信頼があれば、相手の意図を善意に解釈でき、政治的な行動を防ぐ助けにもなります。関係に違和感があるときは、どの側面が弱いのかを見極めるために使ってください。この表は、各側面が 3 つの要素にどう対応するかを示しています。
| 要素 | 関連する側面 |
|---|---|
| 共感 | 親しさ、応答性、守秘性 |
| 尊重 | 情報、育成、能力 |
| 利他性 | 適切なグループのための効率の最適化、マインドセット、一貫性、実績 |
- 適切なグループのための効率の最適化
- 「私」ではなく「私たち」の最適化
- 個人ではなく組織
- 自分のチームではなくほかのチーム
- 縄張りや自分の王国づくりではなく全体
- マインドセット
- 豊かさ
- ゼロサムではなく、全体の利益が増えるポジティブサムの立場
- 開かれた心
- 創造的で双方に利益のある解決策を探す
- 親しさ
- 相手をよりよく知る
- (積極的に)耳を傾ける
- より多くの時間を一緒に過ごす
- インフォーマルなコミュニケーション
- 情報
- 応答性
- 対応可能であること
- 提案を受け入れる姿勢
- 守秘性
- 尊重されていること
- 安心できる場
- 否定的な内容は大きな場ではなく、少人数のグループで伝える
- 何をいつ共有してよいかについての慎重な判断
- 育成
- より広いグループの前で称賛する
- (アイデアの)功績を認める
- 建設的に議論を選ぶ(相手の主張を最も強い形で捉えることと、弱い論点を探しながら聞くことの違い)
- お互いをよりよくする
- なぜそうするのかを説明する(Simon Sinek)
- 成功を祝う
- 能力
- 求められるものに合わせる
- 高い基準
- 粘り強く知恵を絞る
- 一貫性
- その場に誰がいるかに左右されない意見や行動
- 密室で話を進めない
- 同僚全員との連携以外に、派閥を作らない
- 政治的な駆け引きをしない
- 実績
- 約束を守る
- 成功の実績
リモートチームでの日々の実践
ピープルリーダーは、チームを結成するとき、新しい人が加わるとき、そして年間を通じて信頼に取り組む必要があります。これらの実践は、特にタイムゾーンをまたいで働く際に役立ちます。
1-1 ミーティング
1-1 ミーティングは、お互いを個人としても仕事の面でも知るための最良の場です。同じ人は 2 人とおらず、ある人に有効なアプローチが別の人には有効でないこともあります。1-1 で弱さを見せることは、信頼を築きます。
実践方法: 週末のことや生活の中で起きていることを話す時間を取ってください。特に一緒に働き始めたばかりの頃は、仕事の話に入る前の 5〜10 分を相手自身の話に使ってください。家族、ペット、趣味について話してくれたことを覚えておき、後でまた尋ねてください。よく知らない場所に住んでいるなら、そこで何が起きているか少し調べてください。雑談やつながりづくりのヒントは、Think Fast, Talk Smart のエピソード 89 に出演した Rachel Greenwald の話を聞いてください。
フィードバックを求める
マネージャーは、チームからフィードバックを受け取ることに前向きであるべきです。ほとんどの人は、マネージャーに建設的なフィードバックを伝えることに抵抗を感じます。そのため、受け入れる姿勢は、相手がわかっているはずと思わず、示す必要があります。
実践方法: 1-1やパフォーマンス管理プラットフォームを通じて、定期的にフィードバックを求めてください。すべての 1-1 は、チームメンバーがあなたのパフォーマンスについてフィードバックを伝える機会です。相手が安心して率直に話せるよう、エゴのない環境を作ってください。
チームメンバーの功績を認める
#thanks Slack チャンネルを使って、チームメンバーを公に称賛してください。毎週、毎月、四半期ごとにチームの成果を振り返り、各チームメンバーと会って、その人の成果を確認してください。コーチングのアプローチを取り、本人が達成したことを話せるようにしてください。経営幹部にチームを称賛してもらう機会や、経営幹部の前でチームを称賛する機会を探してください。
実践方法: チームの成果を振り返り、個人を称賛する機会を見つけるため、毎週のリマインダーを設定してください。定期的に行うことで、チームメンバーのキャリアに積極的に関わっていることが伝わります。
チームメンバーが意思決定できるようにする
チームの誰かが優れた力を発揮しているときは、意思決定する余地を与えてください。決定を任せることは、信頼を示す最も明確な方法の 1 つであり、その人のスキルを生かすことにもなります。
性格アセスメント
性格アセスメントは、チームがお互いの違いを理解し、マネージャーが直属の部下を理解する助けになります。結果から、多様な人にとってよりよく機能するようプロセスを調整する方法が見えてくることもあります。結果によって人を決めつけてはいけません。よりよい会話を始めるきっかけとして使ってください。
無料で使える選択肢の例:
- ソーシャルスタイルを理解する
- 感情知能アセスメント
- Gallup Strengths Finder
- 16 Personalities(Myers-Briggs としても知られています)
- DISC Personality Test
- HEXACO Personality Inventory
実践方法: チームに加わったときにアセスメントを受けてもらい、その結果について強みに注目した会話をしてください。強みやスタイルをチームと共有し、本人が希望する場合はREADMEにも追加するよう勧めてください。
1 枚のスライドで自己紹介
1 枚のスライドでの自己紹介は、リモートチームがお互いを知るためのシンプルな方法です。テンプレートから始め、質問項目を好きなように調整してください。
実践方法: 次のチーム通話の 1〜2 日前に、1〜2 人にスライドを作成してもらってください。最初の 5〜10 分で発表してもらい、全員に同じ時間を割り当て、質問を促してください。
交流の時間
自由参加で、仕事以外の時間を一緒に過ごすことは、親しさを育みます。たとえば、進行役と話題(好きな食べ物、2 つの真実と 1 つの嘘、最近の休暇)を交代する週 1 回または隔週の交流通話、文字どおりそれだけがルールの「仕事の話をしない」チャット、出身地のツアー、歩きながらの通話、オンラインゲームなどを行うチームデイがあります。Growth チームの例を参照してください。
実践方法: 参加を任意とし、すべてのタイムゾーンに順番が回るよう時間を変えてください。同期的な通話と非同期の形式を交互に取り入れてください。たとえば、Slack アプリの Geekbot で質問を投稿すれば、別の形式を好む人も参加できます。
ランチ勉強会
複雑なトピックの研修をチームメンバーに主導してもらうと、その人の考え方や伝え方がわかり、マネージャーもどこに支援が必要かを把握できます。タイムゾーンによっては、「ランチ」は朝食、夕食、おやつでも構いません。
実践方法: 四半期ごとにチームでトピックを投票して決めるか、希望者に任せてください。1 人または数人がセッションを作り、チーム全員が参加し、質疑応答の時間を十分に設けてください。
無意識のバイアスを克服する
誰もが他者について思い込みを持ち、マネージャーも意図せず一部のチームメンバーをひいきすることがあります。無意識のバイアスは、信頼を実際に傷つけます。
実践方法: 第一歩として、潜在連合テスト(IAT)を受けてください。四半期ごとにインクルージョン関連の研修の時間を確保してください。チームでの議論では、相手の視点を理解するためにその人の立場に立って考えてください。
高いパフォーマンスを発揮するチームを作るモデルを活用する
高いパフォーマンスを発揮するチームを作るモデルは、チーム開発に広く使われており、信頼はその重要な要素です。高いパフォーマンスを発揮するチームは、お互いを信頼し、支え、尊重し、オープンで率直です。
実践方法: 高いパフォーマンスを発揮するチームのページを確認し、チームでアセスメントを行って信頼の程度を測り、そこにあるリソースを使って議論を進めてください。
学ぶ時間を取る
学習の時間を取るよう勧めることで、相手の成長に力を注いでいることを示してください。自分の領域の動向に関する記事、研究、動画を共有し、学費補助ポリシーを案内し、週の一部を成長のために確保してよいことを明確に伝えてください。
どこから始めるか
マネージャー、同僚、チームの誰かとさらに信頼を築きたいなら、答えは言うのは簡単でも、実行するのは難しいことがあります。率直に話し合ってください。もっと信頼を築きたいと伝えてください。何が信頼を損なってきたかを伝えてください。相手に何を求めているか、期待を明確にしてください。そして耳を傾けてください。真剣に耳を傾けてください。
誠実に取り組んでも、うまくいかない場合:
- 期待を確認してください。 自分の期待は明確ですか?相手の期待は明確ですか?そうでなければ、率直な話し合いに十分な時間を費やしましたか?
- 助けを求めてください。 People Business Partner(PBP)、メンター、または関係のある上司の上司に相談し、助言に基づいて調整してください。
- 結果について正直に伝えてください。 相手を尊重するからこそ、うまくいっていないことを伝え、自分が次の段階への移行を計画する間に、相手にもその準備をする時間を与えてください。相手を困ったまま取り残してはいけません。誰かにとって悪い結末になる必要はありません。全員が努力しても、関係がうまくいかないことはあります。それでも、何も試さずに、どうなっていただろうと考え続けるよりは、はるかによいことです。
信頼を築きたいなら、まず相手を信頼しなければなりません。誰かが先に踏み出す必要があります。あなたが、その人になってください。
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